食の民具たち 平成16年冬季特別展 (2 桶と甕)

桶の構造

図録 平成16年1月発行

 桶は用途に応じ、様々な形に作られている。桶に掛けるタガは竹製が古く、その結束の仕方にねじりタガと組タガがある。後年は、鉄のねじりタガが多く用いられるようになった。これらを口縁部の口輪、中間部の中輪、下部の後輪などに二カ所以上掛けるが、一カ所に数本のタガを掛ける場合も少なくない。
 桶の裏面に注目してみると、本書で紹介した写真のうち15161718の四点には、写真1930のように底板裏面へ側板内周に沿って輪が入っている。多くは竹を丸めた輪だが、写真30の溜は、板に約2.5cm間隔で深い刻みを入れて曲げている。なぜ、底板にこうした輪が入っているのだろうか。これらの桶に共通した用途は、液体を運搬するという点である。通常の桶は底板の裏に輪が入らない。手桶の類には必ずといってよいほど輪が入る。考えられる理由は、水漏れを防ぐのと、強度を保つためである。
 写真17の溜はモロミを運搬する桶で、中間部が膨らむビヤ樽形の形状に特徴がある。この形だと運ぶときに液体が内側へ波寄せるので、揺れてもこぼれにくいという特性がある。

桶(おけ) 組タガ(くみたが) 中輪(なかわ) 溜(ため) ビヤ樽(びやだる)