神奈川県内には、祝儀不祝儀に赤飯を贈答する習慣がある。入れる容器は県内に三タイプがあり、県東部から県北部はハンダイとかアカハンデー、アカハチ、オハチなどと呼ぶ朱塗りの桶を用いる。写真88のハンダイを朱塗りにした形である。平塚市など県央南部はダイカイである。足柄上郡ではエジュウと呼ぶ重箱を用いる。
ダイカイは、写真134・135のように蓋に家紋が金色で入るものが多い。写真138のダイカイは小型だが、朱塗りは珍しく、祝儀専用と思われる。写真137のホカイは一般に上層階級の家で所有していた贈答容器である。注目したいのは写真136の箱形の容器である。これをダイカイと呼んでよいか確認する必要があるが、市域では他に例の無い資料である。二点とも箱の蓋に「相州大住郡四之宮村 嘉永五年子九月吉日」と墨書されており、容器と外箱が合う構造なので、すでに幕末期から市域で使用されていたことは間違いない。そして、これとよく似た資料が山北町川西峰のある家に残されている。山北町では赤飯を入れる贈答容器をエジュウと呼び、重ね重箱を用いるが、ここではメシジュウと呼び、重箱形と箱形の二種類を使い分けている。重箱形には赤飯を入れ、箱形にはボタ餅を入れるという。御殿場市や小山町では葬式にボタ餅を贈る習慣があるため、御殿場方面から嫁いだ人の実家に不幸があるとボタ餅を贈るのである。なお写真136の寄贈者の家では、通常のダイカイも一荷分所有していた。どのように使い分けされていたのか興味が持たれる。 | |
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