私たちは人から物をもらったり、贈り物をするのを好みます。お中元やお歳暮、結婚式のご祝儀と引き出物、葬式の香典と香典返し、誕生日、バレンタインとホワイトデーなどなど。ごく簡単なものでも人に何か差し上げて喜ばれるのは気持の良いことです。贈り贈られる関係が人と人の絆を深めていくのでしょう。
昔はこうした贈答の機会が今よりもっと頻繁にありました。そのときに用いられた容器に、重箱(写真129・130・131・132・133)とダイカイ(写真134・135・136・138)があります。ダイカイとは箱入りで、外側は黒塗、内側は朱塗の大きなお椀で、訛ってデーケーと呼ばれます。ダイカイ二つで一荷、一つで半荷といい、祝儀不祝儀に赤飯を詰め、天秤で一荷、あるいは半荷を担いで届けました。 妊娠して五ヶ月目の戌の日に帯祝いをしますが、このとき、親元や仲人はダイカイに赤飯を入れて届けました。いただいた赤飯は妊娠のお披露目として、お産が軽くなるようにと重箱に軽く詰めて親戚や近所に配りました。お産のための里帰りをオーユサンといい、初産のときは赤飯をダイカイに入れて里帰りをしました。親元ではお産が軽く済むように、いただいた赤飯を少しずつ近所の家へ配りました。子供が生まれると、赤飯を配られた近所や親戚の家は、お七夜ごろまでに米一升などを持参してネネ抱きに来ました。出産後二十一日目を親の上がりといい、産婦はお重に赤飯を入れ、ネネ抱きに来てくれた家へお礼参りに行きました。 ダイカイは葬儀にも使われます。葬儀には、祝儀のときのようにナンテンやゴマはかけずに赤飯だけを詰めます。また、若死にした人には赤飯ではなく、白飯を入れました。故人が実の親や兄弟なら一荷、仲人やカネオヤならば半荷を届けました。贈られたダイカイは玄関前などに積み上げておき、ダイカイがたくさん集まるほど、生前多くの人の世話をしたことになるので自慢でした。そして中身の赤飯は忌中祓いの膳に出しました。最近はダイカイの贈答も廃れつつあり、赤飯を贈る代わりに、蒸物料として現金を持参するようになりました。 ダイカイは、膳椀一式と同様に、主に旧家が所有しており、持たない家は借りて使いました。また、家の建前にダイカイを贈ることもありました。 | |
お歳暮(おせいぼ) 一荷(いっか) 半荷(はんが) 戌(いぬ) お披露目(おひろめ) 蒸物(むしもの) | |
| |
| |
| |
| |
|