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お膳とお椀

食の民具たち 平成16年冬季特別展 (6 お膳とお椀)

お膳とお椀

図録 平成16年1月発行

 現在もご飯茶碗や湯呑み茶碗は家族銘々が専用の茶碗を使って食事をしていることでしょう。これは昔からの習慣で、古くは自分専用のお膳を持ち、お膳の上に焼き物のご飯茶碗と木器の汁椀、磁器の小皿などをのせ、食べ終わったらお椀にお茶を注ぎ、箸でかき混ぜて飯粒を落としながら飲み干しました。食器を洗う頻度は家により様々でしたが、農家では頻繁に洗う家でも日に一度、夕食後に水洗いをする程度で、中には週に一回ぐらいしか洗わない家もありました。これを不潔と感じるのは現代の感覚で、お茶を注ぐことでほとんどきれいになったし、昔の食事は油物が少ないので、さほど汚れなかったのです。そして、お膳に銘々の器を伏せてのせ、茶箪笥にしまいました。
 普段使うお膳は、足付の膳や足の無い平膳、あるいは箱膳(写真162-3)など様々でしたが、これを茶の間や囲炉裏の回りに並べ、板の間の上で家族銘々が決まった位置で食事をしました。昭和に入ると徐々に卓袱台(写真98・100)を囲んで食事をする家が増え、共用の食器が多くなり銘々膳の習慣が薄れていきました。なお、平塚では卓袱台のこともお膳といっていました。
 祝儀不祝儀やお正月など、あらたまった機会や大勢の人寄せのときには、漆塗りのお膳とお椀を使いました。多くは、高足膳に黒塗りの親椀、汁碗、平椀、壺椀の四ッ椀が組(写真9799101102など)になったもので、いずれも蓋付きでした。親椀はメシワンともいって御飯を盛り、汁椀はオミオツケともいって汁物をよそい、平椀はオヒラといい煮シメ(葬式にはガンモドキ)などを盛り、壺椀はオツボといって煮豆などを盛りました。これに塗り物の高坏や小皿、陶磁器のお猪口を加える場合もあり、おこうこなどを盛りました。
 旧家や大家は、こうした膳椀を10人前から多い家では50人前ぐらい揃え、お膳やお椀ごとに箱に入れて収納していました。祝言にも葬式と同じ黒塗や黒内朱塗の膳椀を用いましたが、家によっては数種類の膳椀を使い分け、家族用と来客用を区別したり、祝言用の朱塗の汁椀(写真109112)を所有したりしていました。しかし、来客用の揃いの膳椀を所有する家は少数の旧家だけで、一般の農家は祝儀不祝儀などで必要になった際に借用して使いました。

湯呑み(ゆのみ) 銘々(めいめい) お膳(おぜん) 汁椀(しるわん) 磁器(じき) 箸(はし) 頻度(ひんど) 頻繁(ひんぱん) 平膳(ひらぜん) 箱膳(はこぜん) 卓袱台(ちゃぶだい) 祝儀不祝儀(しゅうぎ・ふしゅうぎ) 漆塗り(うるしぬり) 高足膳(たかはしぜん) 親椀(おやわん) 汁碗(しるわん) 平椀(ひらわん) 壺椀(つぼわん) 高坏(たかつき) 陶磁器(とうじき) お猪口(おちょこ) 祝言(しゅうげん) 黒内朱(くろないしゅ) 






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