わたしたちは「相模川流域の自然と文化」をテーマに活動している地域博物館です

大磯型地震を起こす国府津−松田断層

平塚市博物館公式ページ

最終更新 2007年12月

大磯型地震を起こす国府津ー松田断層


大磯丘陵を隆起させる国府津ー松田断層
 国府津−松田断層は大磯丘陵の西縁に沿って、 国府津から松田にかけて走る活断層で、A級の変位量を持つ活断層(逆断層)として知られています。しかし、歴史時代に活動したことがありません。この断層の活動により、大磯丘陵が隆起し、足柄平野が沈降すると考えられています。 5万年前に箱根火山から噴出した火砕流堆積物(箱根新期軽石流)の高度は、この国府津−松田断層を境に、200m以上変位していることから、国府津−松田断層の変位速度は、4m/1000年となります。
 1923年の関東地震では、国府津−松田断層を挟んで、大磯丘陵も足柄平野も共に1.8m程隆起しました。房総沖の相模トラフを震源とする1703年の元禄地震では大磯丘陵は隆起しませんでした。従って、これらの地震では、国府津−松田断層は活動していないことになります。大磯丘陵を隆起させ、足柄平野を沈降させるのが国府津−松田断層であり、この断層を動かす未知の地震に対して大磯型地震と名付けられています。
 足柄平野の鴨宮面は、2500年前に富士山山麓で起こった土石流堆積物(御殿場泥流という)が堆積した面で、現河床より5m高い位置にあります。これは1923年関東地震のような足柄平野を隆起させる地震により隆起したもので、2500年前以降,足柄平野が沈降していないので、国府津−松田断層は活動していないと考えられています。
■大磯型地震と大正型地震
 国府津−松田断層による大磯丘陵の隆起と足柄平野の沈降を引き起こす大磯型地震、大磯丘陵も足柄平野も隆起させる1923年関東地震タイプの大正型地震、という二つの地震を組み合わせて、上述した隆起と沈降を矛盾なく説明する説として、以下のように考えられています。すなわち、大正型地震は600〜800年の周期で活動し、大磯丘陵を2m隆起させると共に、足柄平野も1〜2m隆起させます。一方、大磯型地震は2000〜3000年周期で活動し、大磯丘陵を約5m隆起させ、足柄平野を約5m沈降させます。この二つの地震が繰り返すことにより、大磯丘陵と足柄平野が形成されたと考えられています。
■国府津ー松田断層の活動史
 国府津−松田断層の活動は曽我山を作る礫層(曽我山礫層)堆積後の30万年ほど前から活動を始めたと考えられていますが、大磯丘陵が急激に隆起に転じたのは最終間氷期の15万年前以降とされます。一方、足柄平野は30万年前以降、年に2mmの割合で沈降しているものの、沈降速度が次第に遅くなりやがて隆起に転ずるものと推定されています。
■国府津ー松田断層の活動時期
 国府津−松田断層の活動時期については、最新の活動時期が約3000年前、活動周期が3000年と考えられたことから、政府の地震調査委員会では「今後数百年以内に、変位量10m程度、マグニチュード8程度の地震が発生する可能性がある」とされました。
 神奈川県では平成14年度に小田原市曽我原でトレンチ調査を行い、国府津−松田断層の最新活動時期はAD1100年〜AD1350年頃(650〜900年前)であることがわかりました。平成15年の曽我原トレンチの調査では、4回の断層活動が見出されました。その時期は650〜900年前・約2000年前・約2600年前・約2600〜4000年前と推定され、1000〜1100年の周期で活動していることが明らかになりました。最後に起こった地震から既に650〜900年経ていることから、近い将来、数百年以内に活動する可能性が高いと考えられています。
■神縄・国府津−松田断層帯
 国府津−松田断層の西方延長は、松田北断層・日向断層・平山断層につながり、70km以上に亘るこれらの一連の活断層が大磯型地震の震源断層であるという考えもあります。神縄・国府津−松田断層帯はこうした考え方から、神奈川県でも注目し、調査研究を行っています。しかし、今のところ、国府津−松田断層を除いて、御殿場泥流(約2500年前)以降にこれらの一連の断層が活動した証拠は見つかっていません。
 こうした考え方の他に、国府津−松田断層はプレート境界断層ではなく、関東地震の震源断層から分岐した副断層で、関東地震と関連して活動し、単独では大地震を起こすことはなく、あくまでも関東地震の数回に1回だけ付随的に活動すると言う見解もあります。この考えでは関東地震の繰り返し周期は200〜300年で、まだ100年以上動かないことになります。このように、国府津−松田断層の活動様式については、未解決な問題が残されています。

国府津松田断層を望む 国府津松田断層を望む2
▲国府津ー松田断層を望む(松田町より)
      (断層は活断層研究会1991による)
▲大磯丘陵西縁を区切る国府津−松田断層
      (断層は活断層研究会1991による)
食い違い礫 県のトレンチ発掘
断層帯の礫層中の食い違い礫(小田原市国府津) ▲県がトレンチ発掘した国府津ー松田断層(小田原市曽我原)
山崎1993の地殻変動モデル

▲大磯丘陵と足柄平野の地殻変動モデル(山崎1993)


平塚周辺の地盤と活断層へ戻る

大地の窓へ戻る

平塚市博物館トップページへ
  

平塚市博物館 254-0041 神奈川県 平塚市 浅間町12-41
電話:0463‐33‐5111 Fax.0463-31-3949

ページの先頭へ