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相模川の生い立ちを探る会 第267回 2015年5月 「伊勢原市大山~蓑毛」

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「相模川の生い立ちを探る会」 活動の記録

第274回 2016年1月17日 鎌倉市大町~浄明寺



■ テーマ:名越切通と三浦層群の地層
■ コース:長勝寺バス停→銚子の井→日蓮乞水→名越切通→まんだら堂やぐら群→お猿畠の大切岸→衣張山→浄妙寺バス停

 今回の目的は鎌倉七口のひとつである名越切通に露出する三浦層群逗子層・鷹取山火砕岩部層・池子層などを観察し、各地層の重なりや特徴、堆積時の環境について理解することでした。
 最初に長勝寺バス停前で今日の巡検の目的、コース、三浦半島の地層区分について説明があったあと、鎌倉十井の一つである銚子の井と、鎌倉五名水の一つである日蓮乞水を観察しました。日蓮乞水から県道311号線を南西に進み、新名越隧道中間出口で、泥岩からなる逗子層の露頭を観察しました。逗子層は深海で堆積した泥からなる地層です。県道から名越切通に向かう階段、小坪階段口を上がった広場の東側の斜面でも、逗子層の露頭を観察しました。ここでは泥岩層中に挟まれる細粒火山灰層やスコリア層を観察することができました。
 名越切通には第1切通、第2切通、第3切通の三つの切通があります。第1切通では逗子層と、その上位に重なる池子層の部層である鷹取山火砕岩部層との明瞭な境界を観察することができました。鷹取山火砕岩部層は軽石やスコリアに富む中粒-粗粒砂岩からなり、下位の逗子層とは明らかに異なる岩相であることが良くわかりました。
 まんだら堂やぐら群(中世の横穴式の墓)は期間限定公開で、今回は期間外だったので、柵の外から見学しました。
 お猿畠の大切岸は鷹取山火砕岩部層からなる断崖が幅800 m以上にわたって連なる遺構です。断崖は風化で凝灰質砂岩の硬い層が残り、軽石や岩片を含む軟らかい部分が浸食され、露頭面に明瞭な凹凸がみられました。
 逗子鎌倉ハイランドの住宅街を通り、衣張山に向かう登山道で軽石混じりの凝灰質砂岩からなる池子層の露頭を観察することができました。逗子層の上位を占める池子層は、逗子層に比べて粗粒な岩相を示し、逗子層に比べて浅い環境で堆積したことが示唆されます。登山道を進み、衣張山山頂からは鎌倉市街、稲村ヶ崎の展望が開けていました。ここでも、極粗粒砂岩の露頭がみられ、地質図(江藤ほか,1998)では池子層に区分されていました。また、鷹取山火砕岩部層と同質の岩石である鎌倉石でできた五輪塔が山頂に祀られていました。
 鎌倉市浄明寺の住宅街に出る直前に、スコリア層を挟む暗灰色の泥岩でできた下位の逗子層と、軽石を含む泥質砂岩と凝灰岩の互層からなる池子層が明瞭な境界で接している露頭を観察することができました。
 県道204号線沿いの杉本観音バス停手前で今回のまとめがありました。今回の野外観察会では、三浦層群逗子層、鷹取山火砕岩部層、池子層を下位から順に観察してきました。今回観察した鷹取山火砕岩部層と池子層は非常によく似た岩相で、肉眼で区別がつけづらいものでした。(K. K.)

文献:
・江藤哲人 ・矢崎清貫・卜部厚志・磯部一洋(1998)横須賀地域の地質.地域地質研究報告(5 万分の 1 地質図幅),128p,地質調査所. 

                    

鎌倉五名水の一つである日蓮乞水を観察する。すぐ傍に泥岩からなる三浦層群逗子層が露出していた(鎌倉市大町)。 小坪階段口の上の広場で逗子層の露頭を観察する。軽石や細粒火山ガラスからなる凝灰岩層が挟在していた(逗子市小坪)。
▲鎌倉五名水の一つである日蓮乞水を観察する。すぐ傍に泥岩からなる三浦層群逗子層が露出していた(鎌倉市大町)。 ▲小坪階段口の上の広場で逗子層の露頭を観察する。軽石や細粒火山ガラスからなる凝灰岩層が挟在していた(逗子市小坪)。
東西方向に切り開かれている名越切通の第1切通を西から望む。切通の真中には北落ちの断層が走る(逗子市小坪)。 名越切通の第1切通南側斜面に露出する逗子層(下位)と鷹取山火砕岩部層(上位)(逗子市小坪)。
▲東西方向に切り開かれている名越切通の第1切通を西から望む。(逗子市小坪)。 ▲第1切通の南側斜面に露出する逗子層(下位)と鷹取山火砕岩部層(上位)。
鷹取山火砕岩部層からなるまんだら堂やぐら群を遠望する。やぐらとは13~15世紀に築かれた墓の一種(逗子市小坪)。 南東からみた第3切通。東西性断層が切通を横切っており、写真手前は逗子層、奥は鷹取山火砕岩部層からなる(逗子市小坪)。
▲鷹取山火砕岩部層からなるまんだら堂やぐら群を遠望する。やぐらとは13~15世紀に築かれた墓の一種(逗子市小坪)。 ▲南東からみた第3切通。写真手前は逗子層の泥岩から、奥は鷹取山火砕岩部層の砂岩からなる(逗子市小坪)。
石切場跡とされるお猿畠の大切岸に露出する鷹取山火砕岩部層を観察する(逗子市久木)。 ハイランド団地から絹張山への山道に露出する凝灰質砂岩からなる池子層(鎌倉市浄明寺 )。
▲石切場跡とされるお猿畠の大切岸に露出する鷹取山火砕岩部層を観察する(逗子市久木)。 ▲ハイランド団地から絹張山への山道に露出する凝灰質砂岩からなる池子層(鎌倉市浄明寺)。
絹張山山頂から鎌倉の平野と相模湾を望む。相模湾に突き出す稲村ヶ崎も池子層からなる(鎌倉市浄明寺)。 絹張山北の麓にみられる泥岩層(逗子層)とその上位の凝灰質砂岩層(池子層)の境界露頭(鎌倉市 浄明寺)。
▲絹張山山頂から鎌倉の平野と相模湾を望む。相模湾に突き出ている稲村ヶ崎も池子層からなる(鎌倉市浄明寺)。 絹張山北の麓にみられる泥岩層(逗子層)とその上位の凝灰質砂岩層(池子層)の境界露頭(鎌倉市 浄明寺)。


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