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相模川の生い立ちを探る会 第266回 2015年4月 「海老名の地形と相模国分寺」

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「相模川の生い立ちを探る会」 活動の記録

第272回 2015年11月28日 世田谷区等々力~大田区田園調布



■ テーマ:等々力渓谷と多摩川沿いの段丘地形
■ コース:等々力駅~姫之橋~ゴルフ橋~逆川の碑~等々力渓谷~玉川野毛町公園(野毛大塚古墳)~等々力渓谷(3号横穴古墳~等々力不動尊と不動の滝)~丸子川(六郷用水)~多摩川台公園(蓬莱山古墳~古墳展示室~見晴し台~調布浄水場跡)~浅間神社~多摩川駅

 今回の目的は、多摩川の支流である谷沢川沿いの地域を歩き、周辺の地形を観察して、等々力渓谷の成り立ちや武蔵野台地の地形面の形成について理解し、相模野台地との違いを学ぶことでした。今回は、地理学・地形学・防災学等がご専門の東京都立大学名誉教授であり、武蔵野台地の研究に明るい松田磐余先生が一日ご同行され、解説をしていただきました。
 まず、等々力駅より北に進路をとり、武蔵野台地に形成された段丘面を観察しました。西側の武蔵野Ⅱ面(M2面)と東側の荏原台面(S面)との比高は約8 mでした。相模野台地では、この2つの面の間にもう一つの面(M1面)があるが、この地点では見あたらないとの解説が森先生よりありました。
 さらに西へ進むと谷沢川に架かる姫之橋につきました。松田先生によると、この橋の北側に、かつて、姫の滝と呼ばれる滝があり、等々力渓谷を作った侵食の谷頭部にあたるとのことでしたが、その後谷沢川は人工河川化され、姫の滝も消滅したとのことでした。
 等々力渓谷では、最初に、ゴルフ橋から渓谷を見下ろし、左岸に逆川の排水溝があることを確認しました。ここが、かつて谷沢川が九品仏川を河川争奪した地点であると松田先生より説明がありました。現在、谷沢川に向かって西に流れている逆川は、かつては東に流れる九品仏川の流路の一部だったとのことでした。多摩川に面する武蔵野面の崖端が徐々に北側に侵食されることで等々力渓谷が形成され、さらに侵食がこの付近に及んで、東に流れていた九品仏川の流路を南へ流れる谷沢川が奪ったとの説明を受けました。
 等々力渓谷では、武蔵野台地を形成する地層の観察ができました。下位から、基盤である上総層群高津層、渋谷粘土層(東京層)、M2面の段丘礫層、武蔵野ローム層とそこに狭在するTP(箱根東京軽石)の順に観察ができました。ゴルフ橋のたもとでは、泥岩からなる高津層が河床付近で見られました。渓谷の崖面に築かれた3号横穴墓から50 m程南に下ったところに、河床の泥岩層とは異なる砂質の地層(上総層群あるいは渋谷粘土層と考えられる)があり、内湾性の貝化石や生痕化石が含まれることを確認しました。M2面の段丘礫層とその下の渋谷粘土層の境からは湧水が確認でき、不動の滝も同じ層準からの湧水であることがわかりました。
 等々力渓谷を後にして、丸子川(六郷用水)と交差する沖積面までいったん下り、そこから丸子川沿いを東に3 km進み、田園調布台面(S面)にある多摩川台公園まで登り返しました。昼食に利用した玉川野毛町公園の中には前方後円墳である野毛大塚古墳がありましたが、多摩川台公園にも幾つもの古墳があり、公園内の古墳展示館にて出土品を見ることができました。
 最後に、浅間神社境内の展望広場で先生方よりまとめを受けてから、一同帰路につきました。(Y. H.)

                    

等々力駅北に広がる荏原台面の最高高度地点(手前)と下位の武蔵野Ⅱ面(奥)を望む(世田谷区等々力)。 姫之橋から矢沢川上流を望む。かつて存在した姫の滝は写真左奥付近にあったとされる(世田谷区等々力)。
▲等々力駅北に広がる荏原台面の最高高度地点(手前)と下位の武蔵野Ⅱ面(奥)を望む(世田谷区等々力)。 ▲姫之橋から谷沢川上流を望む。かつて存在した姫の滝は写真左奥付近にあったと説明を受けた(世田谷区等々力)。
ゴルフ橋から矢沢川の上流側を望む。写真下側の排水口は逆川が矢沢川に合流する口である(世田谷区等々力 等々力渓谷)。 人家の間を走る、現在は暗渠となったかつての逆川の流路(世田谷区等々力 ゴルフ橋東)。
▲ゴルフ橋から谷沢川の上流側を望む。写真下側の排水口は逆川が谷沢川に合流する口である(世田谷区等々力 等々力渓谷)。 ▲人家の間を走る、現在は暗渠となったかつての逆川の流路(世田谷区等々力 ゴルフ橋東)。
矢沢川右岸(写真右側)の河床に上総層群高津層と考えられる泥岩層がみられた(世田谷区等々力  ゴルフ橋下)。 5世紀に築かれた帆立貝式前方後円墳である野毛大塚古墳の頂部に登る(世田谷区野毛)。
▲谷沢川右岸(写真右側)の河床に上総層群高津層と考えられる泥岩層がみられた(世田谷区等々力  ゴルフ橋下)。 ▲5世紀に築かれた帆立貝式前方後円墳である野毛大塚古墳の頂部に登る(世田谷区野毛)。
矢沢川左岸の足下に露出する、化石質な泥質砂岩層を観察する(世田谷区等々力 等々力渓谷)。 矢沢川にかかる不動の滝。水は渋谷粘土層とその上位のM2面の段丘礫層との間から湧く(世田谷区等々力 等々力渓谷)。
▲谷沢川左岸の足下に露出する、化石に富む泥質砂岩層を観察する(世田区等々力 等々力渓谷)。 ▲谷沢川にかかる不動の滝。水は渋谷粘土層とその上位のM2面の段丘礫層との間から湧く(世田谷区等々力 等々力渓谷)。
丸子川に沿って北へ進む。丸子川は江戸時代に徳川家康によって整備された六郷用水の下流部にあたる(世田谷区等々力)。 田園調布台面にある多摩川台公園から、多摩川の上流側と流域の沖積面を望む(大田区田園調布)。
▲丸子川に沿って北へ進む。丸子川は江戸時代に徳川家康によって整備された六郷用水の下流部にあたる(世田谷区等々力)。 ▲田園調布台面にある多摩川台公園から、多摩川の上流側と流域の沖積面を望む(大田区田園調布)。


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